西淀病院地域総合内科後期研修プログラム
○ 対象と期間
西淀病院地域総合内科後期研修は、将来中小規模病院で家庭医療・プライマリケアを担う意思のある人を対象とし、期間は3年間とする。
○ 一般目標
将来プライマリケア・地域医療を担うために内科にとどまらない病院基盤型家庭医療を学び、地域で包括的・継続的に患者様を診る視点を身につける。生涯学習し発展していく職業人としてのプロフェッショナリズムを養う。
後期研修中に日本内科学会認定医の取得を目標とし、後期研修終了後に日本内科学会総合内科専門医の取得を目標とする。当院は日本内科学会教育関連施設であり、内科学会認定医取得後5年間の研修で総合内科専門医の受験資格が得られる。
○ プログラムの構成
3年目前半の地域総合内科での研修(6ヶ月以上)、5年目前半での地域総合内科での副指導医を必須とする。残りの期間は初期研修で不十分だった分野を中心にローテーションを行う(大阪民医連の他院所も含む)。希望により6ヶ月までの外部研修も可能である。
3年間のローテート例

○ 研修ユニット
3年間の研修を通して、各科のローテーションと並行してユニットごとの研修を行う。ユニットごとに分けて期間と研修目標を設定する。全体を統括する指導責任者とともに、それぞれのユニットについて指導者を決める。ユニットによっては医師以外の職種が指導者になる場合もある。以下に示す期間や到達目標・研修方略は概略であり、それぞれ研修医・指導者間の議論の上で変更して最終的に決定する。
(1)家庭医を特徴づける能力ユニット
期 間:後期研修の3年間
到達目標
- 生物心理社会モデルと患者中心の医療、家族志向のケア、健康増進と疾病予防、地域住民のケアなど家庭医を特徴づける能力を理解し、臨床に生かすことができる。
研修方略
- 指導医や他の研修医とともに、患者中心の医療、家族志向のケアなどについて標準的な教科書の抄読を行う(週1回)。
参考文献 家族志向のプライマリ・ケア
S.H.McDanielら著 松下 明訳 シュプリンガー・フェアラーク東京 2006
患者中心の医療 M. Stewartら著 山本 和利訳 診断と治療社 2002
- 研修開始時に選んだテーマについてshowcase portfolioを作成し、ローテーション終了時の多職種を含むふりかえりや研修医のポートフォリオ発表会(年1回)で発表する。
- 初期研修医向けの家庭医療ワークショップを企画・運営する(月1回)。
(2) 病棟医療ユニット
期 間:西淀病院で病棟を担当する期間。3年目の6ヶ月以上(地域総合内科のローテート期間)と5年目の6ヶ月(副指導医の期間)
到達目標
- 高度な検査や処置を必要としない一般内科症例について、EBMに基づいて自らの判断で検査・治療の方針を決めることができる。適切なタイミングで専門医にコンサルトすることができる。
- 基本に基づいた医療面接・身体診察が適切な時間内にできる。
- 鑑別診断をふまえた症例プレゼンテーションが適切にできる。
- 臓器別専門医療にとどまらず包括的に患者様を診る視点を身につける。
研修方略
- 総合内科病棟で7〜10人程度の患者様の主治医となる。指導医・初期研修医とのチームで担当するため、初期研修医の受け持ち患者についても把握することが求められる。呼吸器・感染症・内分泌代謝を中心とした病棟だが、初期研修で経験が不十分だった分野を中心に研修する。週3回のチーム回診、毎日のまとめ、週1回の病棟回診(6階)で診断・治療方針を確認する。
- 研修医カンファレンス(週1回)の司会を行うとともに自らの症例についてもプレゼンテーションを行う。プレゼンテーションは標準的な教科書に基づいて準備する。
- 医療面接・身体診察・鑑別診断について標準的な教科書の抄読会(週1回)を初期研修医とともに行い、その運営も担当する。
参考文献 Dr. ウィリス ベッドサイド診断 G. Christopher Willis 松村 理司監訳 医学書院 2008
ベイツ診察法 Lynn S. Bickley 福井 次矢ら訳 メディカル・サイエンス・インターナショナル 2008
- EBMの5つのステップを学び、自らの診療で生じた疑問に適用してレポートとして提出する(1テーマ以上)。
- 主治医となった患者様について高齢者や終末期のケアについて多職種で臨床倫理カンファレンスを行い、考察を行ってレポートを提出する。
(3)救急医療ユニット
期間:後期研修の3年間
到達目標
- 一次医療機関(中小規模病院・診療所)での救急医療の役割について理解し、必要十分なファーストエイドができる。適切な処置を行った上で入院の判断あるいは専門医療機関への転送ができる。
研修方略
- 週2単位程度の救急外来と週1回程度の外来当直を担当する。
- 救急外来カンファレンス(週1回)に出席し症例提示も行う。
- 診療所を含む看護師を中心とした他職種に対する救急医療の学習会(月1回)を担当する。
- 地域のICLSコース(二次救命処置基礎コース)にインストラクターとして参加し、市民に対するBLS・AEDの指導も行う。
- 希望があれば、ローテーションで耳原総合病院のER(救急室)研修を行う。
(4) 総合外来・慢性疾患ユニット
期間:後期研修中の内科ローテート期間
到達目標
- 初診や急性疾患を中心とする総合外来で適切な初期評価と対応を行うことができる。
- 生活習慣病を中心とした慢性疾患を外来でフォローして必要な治療を行い、適切な全身管理ができる。
研修方略
- のざと診療所での一般外来(週1単位)を担当する。診療終了後に指導医のフィードバックを受ける。
- 初期研修医と指導医との外来カンファレンスに参加して症例を検討する(週1回)。
- 専門医の予約外来を見学して慢性疾患の外来管理を学ぶ。
- 慢性疾患グループ(糖尿病・喘息など)に所属して活動し、患者さん向けの教室を担当する。
- 生活習慣病の治療に必要な認知行動療法の理論と技術を学び、実際の診療に生かす。禁煙外来を担当する。
(5)在宅医療ユニット
期間:後期研修中の内科ローテート期間
到達目標
- 在宅医療の特性を生かし、生活の中で患者様を把握して診療することができる。
研修方略
- ファミリークリニックなごみまたはのざと診療所の訪問診療を担当する(週1単位)。終了後に指導医のチェックを受ける。
- 担当患者さんを高齢者総合評価(CGA)を用いて評価する。主治医としてサービス担当者会議にも出席する。
(6) チーム医療・マネジメントユニット
期間:後期研修の3年間
到達目標
- チーム医療の中で医師に求められる役割を自覚し、医療の質を向上やリスクマネジメントのために必要な課題に取り組むことで病院に貢献できる。
研修方略
- 多職種からなるチーム(感染対策チーム(ICT)・栄養サポートチーム(NST)・褥瘡チームなど)に参加し、与えられた期間でテーマを決めて改善に取り組む。大阪民医連学術運動交流集会などでの発表を目標とする。
- 医師患者間や職種間のコミュニケーションについて、講義やセミナーを通してその理論と技術を習得する。
- 保険診療の枠組みや病院・診療所経営について指導医および医事課から講義を行う。レセプトチェックの内容について指導医のチェックを受ける。
- 病棟運営会議に参加し経営指標を理解した診療を行う。
(7)地域医療ユニット
期間:3年目の6ヶ月以上(地域総合内科のローテート期間)と5年目の6ヶ月(副指導医の期間)
到達目標
- 地域の特性や健康問題を知り、その中で自らの医療機関に求められる役割を理解して患者様の生活背景を考慮した診療やヘルスプロモーションを行うことができる。
研修方略
- 新入職員向けの地域診断フィールドワークにチューターとして参加して西淀川地域の社会状況や特性について調べ、その中で生じる健康問題と医療に対するニーズについて考察する。
- 地域住民対象の班会や行事、企業健診などに参加する。
(8) 医学教育ユニット
期間:5年目の6ヶ月(副指導医の期間)
到達目標
- 初期研修医の指導に加わることを通じて、将来後進を育てるのに必要な医学教育の基礎を学ぶ。
研修方略
- 総合内科カンファレンスで医学教育についての教科書や文献を抄読する(週1回)。
- 初期研修医の副指導医として日常的な相談相手になる。医学生や初期研修医向けのカンファレンスを企画・運営してフィードバックを受ける。
- 医学生向けの地域医療セミナーに実行委員として参加する(年2回)。
- 医学教育学会や民医連内の指導医セミナーに参加する。
(9) 臨床研究ユニット
期間:後期研修の3年間
到達目標
- 臨床で生じた疑問について自ら科学的に答える臨床研究を行うことができる。
研修方略
- 臨床研究を行うのに必要な研究デザインや施行方法の知識を講義・自習を通して学ぶ。
- 研修開始時に決めたテーマについて科学的なデザインで臨床研究を行い(できれば前向き)、プライマリケア関連学会(プライマリケア学会・家庭医療学会)で発表する。
(10)社会医学ユニット
期間:3年目の6ヶ月以上(地域総合内科のローテート期間)と5年目の6ヶ月(副指導医の期間)
到達目標
- さまざまな面で格差が広がる日本社会の現状とそれによって起こる健康問題を理解し、その中で自らの医療機関に求められる役割を理解しながら診療できる。
研修方略
- 新入職員向けの地域診断フィールドワークにチューターとして参加して、健康の社会的決定要因や医療の社会的側面について考察する。
- 主治医として担当した症例の中から社会的に困難な事例について、多職種での臨床倫理カンファレンスを行う。看護師とともに退院した患者様の自宅訪問を行う。
○ 評価
形成的評価として、総合内科カンファレンスで月1回ふりかえりを行う。総合内科研修到達度評価表に基づいて3ヶ月経過時と研修終了時に評価を行う。指導医や研修システムに対するフィードバックを行い、研修システムの改善に役立てる。
○ 週間スケジュール(例)

○ 指導医
福島 啓(1997年卒、日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医) 指導責任者
落合 甲太(2003年卒、日本内科学会認定医)
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