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大阪民医連後期研修プログラム

家庭医後期研修プログラム「なごみ」

2008年9月改訂

【はじめに】

 気軽に何でも相談できる医師にかかりたい、というのは多くの患者が望んでいることです。しかしこれまで日本の医師養成は、専門医養成に重点が置かれ結果としてほとんどの「かかりつけ医」がプライマリケア医としての研修を行うことなく実際に「かかりつけ医」になってから独学で能力を身につける必要がありました。そうした状況の中、日本でもようやく日本家庭医療学会の尽力で家庭医養成後期研修プログラムの認定が行われ、本格的な家庭医養成システムが始まりました。初期臨床研修の必修化によって日本の研修医はこれまでより幅広い臨床能力を初期研修で獲得することが可能になりましたが、さらにそれを深め地域で医療ができる家庭医になるためには、引き続く後期研修が重要です。
 大阪民医連は現在大阪府下に48の診療所を有しています。全ての研修医に診療所研修を必須のプログラムとして行ってきた歴史がありますが、本格的な家庭医の養成は始まったばかりで、他の進んだ施設とも協力しながら、地域で医療の行える医師の養成を進めます。
 なお、この研修プログラムは、日本家庭医療学会の認定後期研修プログラム(2006年2月Ver.1公表)の内容に沿って、当地域・当施設の特徴を生かすことを意識して作成しました。

【一般目標Goals】

 後期研修を修了した医師が、地域の中で診療所長もしくは小規模病院の家庭医・総合医として医療・介護・保健活動を行っていくために必要な知識・技能・態度を修得する。

【個別目標Objectives】

  1. 「患者中心の医療」の方法を理解し、実践できる。
  2. 質の高いコミュニケーション能力を身につけ、良好な医師−患者関係を構築できる。
  3. 家庭医・総合医に必要とされる基本的身体診察の技能を修得する。
  4. EBMの理論と方法を理解し、日々の医療活動の中で活用できる。
  5. 小児、思春期、高齢者、女性などの特性を踏まえた独自のアプローチ法を実践できる。
  6. Common Problem(医学的問題だけでなく、心理的・社会的・倫理的問題も含む)に対する対処法を理解し実践できる。
  7. 家族のライフサイクルを理解し、家族志向のケアが実践できる。
  8. 地域診断を行い、地域の医療・介護・保健のチームの中で地域包括ケアを必要な患者に対し提供できる。
  9. 医療経営の評価ができる。
  10. 健診、予防接種、介護保険制度のシステムを理解し活用できる。
  11. 継続的な医療の質の改善が行える。
  12. 臨床研究と初期研修医・医学生の教育ができる。

【研修プログラム名と責任者】

大阪民医連後期研修プログラム:家庭医後期研修プログラム「なごみ」
研修責任者:大島民旗
(ファミリークリニックなごみ(以下FCなごみ)所長、日本プライマリケア学会研修指導医、日本内科学会専門医、日本呼吸器学会専門医、日本禁煙学会専門医)

【プログラムの特徴】

  1. 研修の中心となるFCなごみは、06年4月に開設した診療所で、民医連で始めて「ファミリークリニック」の名称をつけ、家庭医療の実践を開設当初から目指しています。在宅患者は70名前後で、訪問診療を活発に行っています。
  2. 診療所のある大阪市淀川区は、町工場と古くからの世帯に、JR東西線開通により新築マンションが増え、労働者、高齢者、子供とさまざまな年齢層の住民がおり、都市型の家庭医を目指す医師が研修するには最適な地域です。ただし都市部ですので、耳鼻咽喉科・眼科疾患や産婦人科疾患を継続して診る機会はやや乏しいといえます。
  3. 研修プログラムは連携する小規模病院とのアクセスのよさ(JR一駅、送迎バスあり)を生かし、病棟研修、診療所研修の間に小児科、泌尿器科、皮膚科など外来研修を週1単位組み込む形式をとっています。このほうが大規模病院で短期間のブロック研修を行うより、プライマリケアの要素の「継続性」を学ぶことができます。
  4. 民医連は共同組織(医療生協、友の会)に支えられており、そうした地域の住民とのかかわりから地域の医療機関、家庭医に対するニーズを学ぶことができます。

【研修期間と受け入れ定数】

 2年間の初期研修修了後の医師(終了直後でなくてもよい)
 3年間、定数毎年4名

【研修施設】

必修研修
診療所(6ヶ月):FCなごみ(大阪市淀川区)
総合内科(6ヶ月):西淀病院(218床、大阪市西淀川区)or耳原総合病院(384床、堺市)
小児科(3ヶ月):耳原総合病院or尼崎生協病院

選択研修
耳原総合病院:内科(総合、消化器、循環器、糖尿病、神経リハ)、ICU、ER、外科、整形外科、麻酔科
西淀病院:内科(地域総合、呼吸器、糖尿)、整形外科、婦人科、心身医療科、小児科、泌尿器、皮膚科
コープおおさか病院:内科(総合、消化器)
尼崎生協病院:内科、小児科、産婦人科
東大阪生協病院:神経リハ
精神科:吉田病院

診療所:のざと診療所、大福診療所(奈良)、たんご診療所(京都)
保健施設「よどの里」、訪問看護ステーション

 

【研修ローテーション】

 研修ローテーションは3年間終了時のアウトカムが、一般目標に到達するように設定します。
 大阪民医連の後期研修採用試験(面接、医療面接、筆記)を行った後に、採用通知で連絡し、その後プログラム責任者とヒアリングを行い、ローテーションを決定します。
 ローテーションの変更希望は、3ヶ月前までに希望を伝えていただき、大阪民医連研修委員会で確認します。

後期研修1年目

  • 内科総合研修:内科総合(混合)病棟(耳原総合病院or西淀病院orコープおおさか病院で6ヶ月以上)に加え、臓器別病棟のローテーション(上記+東大阪生協病院:3〜4ヶ月)。呼吸器・循環器・消化器・神経リハ・内分泌/代謝・感染症について特に初期研修で経験が不足した分野を中心に研修することが望ましい。救急・終末期医療を主治医として経験する。総合(混合)病棟では1年目研修医の副指導医を行う(後期2年目に行ってもよい)。
  • 外来研修:救急外来を所属の病院で週1〜2回行う。一般外来は内科研修中の病院もしくは近接診療所で、指導医を決めて研修。初期研修で外来診療を経験していない研修医は、見学→診察前に相談の段階的研修。終了後フィードバック。
  • 週1単位の訪問診療。見習いを数回行った後、指導医がすぐに相談に乗れる環境で実施。終了後フィードバック。

後期研修2年目

  • 内科研修の継続。
  • 救急外来研修を週1単位程度継続。所属の病院で整形外科、皮膚科、泌尿器科などプライマリケアの現場でよく遭遇する症状の対処ができるように研修を行う。初期研修で必修の外科・産婦人科・小児科・精神科の不足部分を補う(後期1年目に行ってもよい)。
  • 在宅研修を希望に応じ継続して行う。
  • 診療所での外来研修は、指導医の診療日にペアで診療を行うことから開始し、その後指導医のいない日に診療し終了後にフィードバックを行う。
  • 後半からより診療所にシフトし、一般病棟の入院患者の受け持ちをせず、診療所の外来研修により比重を置いた研修に移ることができる。
  • 1〜2週間程度老人保健施設、訪問看護ステーションなどの研修を行う。

後期研修3年目

  • FCなごみでの研修(6ヶ月以上)。所長のいない日の外来も行う(終了後フィードバック)。
  • 近畿の民医連診療所の研修(1ヶ月程度)を希望によって行う。
  • 全国の家庭医養成プログラムを実施している施設の研修(3〜6ヶ月程度)を研修医の希望を元に実施する。研修費用は大阪民医連外部研修規定にのっとる。

その他(3年間を通じて実施する内容)

  • 地域の住民対象の健康教室
  • 地域の住民の集まり(健康まつりなど)への参加
  • 老人保健施設・特別養護老人ホーム・グループホームなどの企画(運動会など)への参加
  • 企業検診など健康増進活動への参加
  • 行政交渉(保険料値下げ、生活保護申請など)への参加
  • 地域保健医療研修を行う初期研修医の相談役
  • 学会・セミナー参加(家庭医療学会、プライマリケア学会など)
  • 指導医講習会の修了
  • 研究活動(家庭医療学会もしくはプライマリケア学会での発表)
  • 大阪民医連後期研修医会議に参加

※ 大阪民医連で初期研修を修了した場合

  • 大阪民医連で初期研修を行う研修医は、家庭医後期研修プログラムを引き続き希望する場合、小児科3ヶ月(全員3ヶ月)、産婦人科3ヶ月(基本は1.5ヶ月)、精神科3ヶ月(基本は1.5ヶ月)の研修を初期2年目に行うことが望ましい。
  • 初期研修中の地域保健医療研修はFCなごみ以外の診療所での研修が望ましい。

 

【評価とフィードバック】

  • 外来研修で受け持った患者は、後期研修1年目は全例、2・3年目は初診患者の全例をフィードバックする。
  • 各科研修では事前のニーズ評価を行い、3ヶ月以上の研修期間は中間と終了時の評価を行う。
  • 診療所研修中はDaily Logの記載とポートフォリオ形式で週1回の振り返りを行う。
  • ハーフデイバック:2週に1回全ての後期研修医が集まり、SEAを用いた振り返り、研修内容の調整を行う。

【研修修了後の進路】

 近畿の民医連診療所(所長もしくは副所長)、中小規模病院の教育担当、サブスペシャリティーを持った総合医、プライマリケア医、外来中心医など

【指定図書】

「患者中心の医療」モイラ・スチュワート著、山本和利監訳、診断と治療社、5000円
「家族志向のプライマリケア」S.H.McDanielら著、松下明監訳、シュプリンガー社、7500円
「メディカルインタビュー−三つの機能モデルによるアプローチ」Steven A.Cole,Julian Bird著、飯島克己、佐々木将人翻訳、MEDSI、3990円
「臨床倫理学第5版-臨床医学における倫理的決定のための実践的なアプローチ」Albert R.Jonsenら著、赤林朗、蔵田伸雄、児玉聡監訳、新興医学出版社、3465円
「この一冊で在宅患者の主治医になれる」飯島克己編集、南山堂、6930円
「スタンダード家庭医療マニュアル−理論から実践まで」葛西龍樹編著、永井書店、6800円

【参考】
後期研修3年間のスケジュール(例)

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